ハンティング(狩猟), フォックスハンティング

10月末のハーフターム(通常公立学校は1週間、私立学校は2週間)が終わり、多くの英国人家族は温かいモーリシャスやカリブ海からもどってきます。


上流階級・アッパーミドルクラスの多くはカントリーサイドにカントリーハウスをもっていますので、これからはハンティング(狩猟)を楽しみます。


シーズンとしてはすでに10月からはじまっていますが、これからが本番です。伝統的なレストランではGAME料理を味わうことができます。GAME料理とはきじやうさぎなどハンティングでしとめた動物のこと。クラレットと一緒に楽しみます。クラレットというのはフランスボルドーワインのこと。


英国のポッシュな方々はボルドーといわず、クラレットと呼びます。広大なカントリーハウスの敷地内でハンティングを楽しみ、庭のマーキューイ(白いテントのこと)にはシェフ達が待機しています。捕ってきたばかりの獲物をその場で調理するわけです。 血に弱い方、動物愛護者の方は絶対に耐えられない光景です。とても幸せそうにしている英国人友人達をみると、やはり「狩猟民族」なんだなあ、と実感する瞬間です。特に男性は獲物を多くとらえた方はもう子供のように大喜びしています。やはり「雄」として家族に肉をとってきたという誇りなのでしょか(笑)。


フォックスハンティング(キツネ狩り)もシーズンです。フォックスハンティングは動物愛護者におされ、今では法律で禁止されています。ですが、今でも広大な敷地内で、「私営地でなにをしようが自分の勝手だ」ということで、フォックスハンティングをしている方々もいます。私はもともと英国へは乗馬留学で訪れていますので、このフォックスハンティングに参加したことがあります。多くのジェントルマン達が赤や黒の乗馬服に身を包み荒野を駆けていく姿は正直、とても「英国的」で感動しました。


でも、きつねを追いつめていく様子は確かに残酷ではあります。一時、ハンティングとフォックスハンティングには全く参加しない時期がありました。やはり残酷という理由でお誘いをお断りしたのです。ですが、ある英国人友人がどうしても来てほしい、といわれ、仕方なく参加したことがあります。彼は私に、「この家族はこのハンティング用の敷地を管理しているんだ」「このビレッジはフォックスハンティングで生活しているんだよ」といろいろな方々を紹介してくれ、彼らの生活を説明してくれました。


ハンティングやフォックハンティング用の犬のブリーダーなど、これらが完全になくなってしまえば、仕事を失う方々がたくさんいることに気がつきました。「新しい仕事を探せばいい」と反対団体の方々はいいますが、「そう簡単に新しい土地に移動したり新しい仕事を得ることは無理だよ」と敷地の管理を代々しているご家族の方が話してくれました。特に日本からお越しいただいた生徒様から「なぜイギリス人はこんな残酷なスポーツを楽しむのですか?」という質問を受けることがありますので、何百年・何千年も続いてきた伝統的なスポーツを急に廃止するのにはかなりの時間が必要、ということを理解していただければと思います。特にカントリーサイドに住む労働者階級の方々はなかなか仕事がありません。現在の英国が抱える問題でもあります。首都ロンドンでは、億単位のお金をもっていても長者番付500番にも入りません。多くの方はビリオンエラーです。1年の半分は海外の高級リゾートで過ごし、プライベートジェットで旅行し、通常のフライトを利用するときにもエコノミークラスなんて知りません。よく飛行機にのるときに、左側か右側か、といういい方をしますが、右側のこと(エコノミークラス)は何もしらないのです。億以下は数えないという方もいます。それに比べて彼らの領地で働く人たちの収入を考えると、今の英国が抱える階級差・地方による所得差がくっきりと見えてきます。


ホリデーに年何回、どこにいくかだけでしっかりと階級がわかり、生活のために仕事をしなくてもよい階級が今も存在するのです。夏のロンドンでのシーズン(夏の社交シーズン)がおわり、社交は、すでに説明したようにカントリーサイドでおこなわれるようになります。その間をぬうようにして、クリスマスにむけて多くのチャリティーパーティーに参加または企画する、これが生活のために働かなくてもよい階級の秋の過ごし方となります。


<GAME料理>


人気の投稿