英国のカントリーハウス(2)

お庭の一部:眼下に広がる美しい英国のカントリーサイド
広大な敷地の中には、畑や、森、林、そして川までが流れています

立派なステーブル (厩舎)

私が校長を勤めるロンドンのフィニッシングスクールの生徒様のなかにも、お仕事の関係上からこのような個人のカントリーハウスにご招待された方々が少なくありませんが、まず到着して、お茶を頂いている間に召使が自分達の荷物を整理していたのでびっくりしたと言う方がいらっしゃいました。

日本人にはなかなかなじみのないことですので、カントリーハウスに招待されたときのマナーを簡単にお話します。

まず、よく質問されるおみやげですが、よほど仲がよろしくて、招待先の方から『ロンドンでこのお店のこれを買ってきて』などと頼まれない限りは何もいりません。

これはアフタヌーンティーなどに招待されたときにもそうなのですが、日本人は必ず手土産を気にしますよね。

ところが英国、とくにこのようなカントリーハウスやアフタヌーンティーなどに招待された場合にお菓子などを持っていくと、「あなたのところの食べ物だけでは十分ではないのでこれを持ってきてあげました」という意味になってしまいます。手土産は必要ありません。

それよりも大切なのは、その後です。お礼状(サンキュウーカード)を送り、次回はこちらがお招きをします。

カントリーハウスには、午後のお茶の時間に到着するようにします。
万が一、早くついてしまったら近くで時間を潰すこと。
パーティーでもそうですが、絶対に招待された時間より早くいってはいけません。カントリーハウスには、午後3時ー4時ごろに到着するようにします。

到着すると召使が車から荷物を運んでくれますので、車には鍵をかけないでください。

ご主人、ご家族が出迎えにきてくれますので、それまでは屋敷の中にははいりません。

通常、家族が使用する入口と使用人が使用する入口は違う場合が多いので、間違って召使のあとについていかないようにしましょう。

お出迎えのあと、アフタヌーンティーがサービスされます。こちらをいただいている間に召使が荷物をほどき、美しくワードローブに入れてくれます。すごいお宅ですと、シャツやドレスにアイロンをかけてくれることもあります。

『下着なども見られてしまうの??』とやはり日本人には抵抗がありますが、通常から召使とはいわないまでも、お手伝いの方がお掃除やお洗濯をしている、という方が多いので、なんの抵抗もないようです。
アフタヌーンティーで出されるお菓子や食べものはすべて彼らの土地からとれたものです。

本当の意味で、最高級のアフタヌーンティーなのですね。
サンドイッチに使用されるパンも朝この土地でとれた小麦粉を使って焼かれたものです。
ティーだけは購入したに違いない、なんて思っていると、彼らの祖先が旧植民地時代から所有している茶園からとれたティーだったりします。

ある日本の一流企業の社長さんが、英国人のカントリーハウスに招待された後に、どちらかというとショックを受けられたように、「日本でいったいどれほどの人間が個人でこれだけの土地、屋敷、使用人を所有しているだろうか・・。なにがこんなに日本と英国で違うのか」とお話されていました。
全く同感です。休みもなく一生懸命働いて手にいれた、ということでもありません。

主人たちに言わせると「これが大英帝国の名残」ということらしいのですが・・。
夜はきちんと着替えてディナーです。通常午後8時からです。
まずレセプションルームで食前酒をいただき、それからディナールームに移り、着席をしてお食事をいただきます。そのあとはドローウィングルームで食後のコーヒーをいただきます。(食後は必ずコーヒーです。紅茶ではありません)ボールルームとよばれる舞踏室がある屋敷もあります。

夜中の1時には寝室へむかいますが、召使がホットチョコレート(ココア)を持ってきてくれますので、
これをいただきながら眠りにつきます。就寝前のチョコレートは安眠を誘うといわれています。
朝は召使がアーリーモーニングティーとよばれる目覚めのティーをお部屋まで持ってきてくれます。

英国人は、特別な場合を除き、朝食を寝室ではいただきません。モーニングルームでいただきます。

そのあと、散歩をしたり、乗馬をしたりして、朝のお茶、モーニングティーを11時ごろいただきます。

朝をたっぷりいただくのが英国式ですので、ランチはありません。そもそもランチはランチョンの略、ヨーロッパ(フランスやイタリアなど)の文化です。
モーニングティーの後は、引き続き乗馬やプールで泳いだり、本を読んだりして過ごします。

冬ですと、ハンティングやきつね狩りがあります。
ふたたび午後3時ー4時ごろからアフタヌーンティーをいただき、夜はディナーです。
同じことが繰り返され、日曜日の夕方お別れをします。
このときにも召使が荷物を全部まとめてくれます。

一度、まるでブティックで買い物をしたかのように、すべての洋服がうすい紙で美しく包装されていたことがあります。(下着も含めて、1枚づつです!!)家に戻り、旅行鞄をあけて、そのあまりの美しさに、我を忘れてみとれてしまったこともあります。

美しいカントリーサイドにある「カントリーハウス」。

これこそ、英国人が求める究極のクウォリティー・オブ・ライフなのです。

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