インディアンサマー・キングススピーチ

映画:キングススピーチより

ホリデーシーズンも終わり、学校もはじまりました。

イギリスの学校は、公立学校は9月はじめに始まり、私立学校は9月中旬からはじまります。

前にも書いたと思いますが、「Pay more, Less school」といって学費が高くなるほど、お休みが多いのです。

階級差・収入差がどんどんひどくなっているといわれているイギリスでは、私立学校に通う子供は全体のたった7%。

小学校の学費は年間1万ポンド以上で、労働者階級の収入を大幅にうわまわり、中流階級ですらやっと年収がこの学費を上回る程度。アッパーミドルクラス以上しか子供を私立学校に通わせることは難しいのです。

秋を感じさせる気候になると思いきや、毎日25度近いインディアンサマーにみまわれているイギリス。インディアンサマーとは、旧植民地で今でも英国連邦のメンバーであるインドの9月の気候が大変よいことから、イギリスでも秋であるはずの9月に良い天気にめぐまれると「インディアンサマー」とよんでいます。

イギリスを訪れて、多くの日本人が驚くのが、インド人が多いということ。

ティーの栽培で多くの英国人がインドに茶園を持っていた(今でもそうですが)ということもあり、インドと英国の関係は旧植民地の中でも少し特別なようです。

第2次世界大戦後、多くの英国人男性が戦争で亡くなり、彼らの仕事を補充するために多くのインド人が英国に渡ってきました。バスや電車の運転手は今でもインド系の方が多いのはその時代から続いています。

旧植民地といえば、アメリカですが、アメリカ人を好まない英国人は少なくありません。

アメリカ英語やマナーをばかにすることはパーティーでは当たり前。

娘の学校では、cool やawesome などハリウッド映画の影響で子供たちが面白がって使うアメリカ英語を「あなた方は誇りある英国人なのですから、アメリカ英語など使ってはいけません」と、これらアメリカ英語を使うことは禁止されています。

春にキングススピーチ(邦題はたぶん王様のスピーチだと思います)という映画が公開され、先日DVDも発売となりました。



これは現女王陛下のお父様ジョージ5世のお話なのですが、その中でエドワード8世とシンプソン夫人も登場します。日本では「王冠をかけた恋」とロマンティックに扱われているようですが、英国ではエドワード8世はこともあろうにアメリカ人女性との恋で義務を捨てた、ということで軽蔑されています。特に時代は今よりもアメリカ人に対する差別がひどかった時。

映画をみて、「イギリスではアメリカ人にたいする態度があんなにひどいのですか?」という質問をされた生徒さんがいらっしゃいましたが、今でもあまり変わりません。

一度私に「中国人ですか?」と聞いてきた英国人に「いえ、日本人です」というと、謝罪してきたので、「そんなに気にしないでください。日本でも英国人はよくアメリカ人に間違われたりしますから」といったところ、「私はなんてひどいことをしてしまったんでしょう。そんなにひどいことだとは思わずに本当にごめんなさい」とかえって大変な謝罪になってしまい、「よくあることなので気にしないで」と言いたかっただけの私は例が悪かったと反省してしまいました。

映画の中でエドワード8世を演じているのはオーストラリア人の俳優。実は、キャスティングのときに、すべての英国人俳優が「エドワード8世だけは絶対に演じたくない」と断ったそうです。

それほど英国人からは軽蔑の対象となったエドワード8世。ところが外国ではエドワード8世は王冠よりも恋を選んだ、と好意をもって受け入れられているようです。

この映画は、今までその陰であまり脚光をあびなかったジョージ5世のストーリーですから、本当の英国がみえてくると思います。王様になるための教育をうけずに育ち、急に王になることを迫られたジョージ5世。その苦労のためにまだ若くして亡くなっています。

また現エリザベス女王陛下も生まれたときには女王になる運命ではなかったのです。

だからこそ英国民のエリザベス女王陛下と亡くなられたクイーンズマザーに対する尊敬は大きいのです。

「高貴に生まれた人間にはそれにともなう義務がある」英国人がよく口にする言葉です。

たくさんのチャリティー活動が行われているのも、実際にこの言葉を実行している表れでしょう。

すべての英国人俳優がエドワード8世を演じることを断ったという理由もこの言葉にあるのではないでしょうか。

インディアンサマーの美しいロンドンの空をみながら、旧植民地諸国に対する英国人の感情を考えた1日でした。

まだキングススピーチをご覧になっていない方はぜひ見てくださいね。

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