ブログをはじめるにあたって
イタリア、ドイツ、フランス留学を経て英国にやってきたのはもう10年以上も前になります。次に予定していたオーストリア(ウィーン)留学をキャンセルしてしまうほど英国に恋してしまいました。
その理由のひとつに、たくさんの素晴らしい英国人との出会いがあげられます。
特に、マナーの恩師であるペキー先生との出会いは、私の人生観などすべてを変えてしまうほどのものでした。私がフィニッシングスクールをロンドンに設立するにあたっても本当に感謝しきれないほどのご協力をいただきました。
悲しいことに、そのペギー先生が突然他界されました。
常に「エレガントな時代」のことをお話され、いつお会いしてもとてもエレガントでいらした先生。
「時代おくれという人もいるけれど、マナーを大切にし、エレガントであるということは、 人間として心にゆとりがあるというしるし。英国人にとってそれはとても大切なことだし、誇りにできることなのよ」
その先生のお考えを、これからも日本人の方々に伝えていきたい、そんな追悼の思いをこめてこのブログをはじめることにしました。英国人の人生の楽しみ方、エレガンスさ、クウォリティーオブライフ、バリューフォアタイムこれらを一緒に感じていただけたらこんなうれしいことはありません。
ペギー先生に初めてお会いしたときのことは今も鮮明に記憶に残っています。
もう70歳になられるというのに、姿勢はまっすぐ、髪は美容院でセットされ、爪にはきれいにローズ色のマニュキュアがほどこされ、そのマニュキュアと同じ色の口紅。その口からでてくる英語は美しいクイーンズイングリッシュ。人間はきれいに歳をとることができるのだなー、と感動した瞬間でした。
階級がある英国では、手をみれば階級がわかるといわれています。マニュキュアを塗っているというよりは、長年にわたり、きれいにお手入れができているかどうかが大切です。
英語でマニュキュアというと、『手のお手入れ』を意味します。
英国のバージンアトランティック航空という航空会社のアッパークラスを利用すると、機内でマッサージなどをしてくれるビューティーシャンが同乗していました(残念ながら今はこのサービスはありません)。
そのメニューにはマニュキュアもあったのですが、日本人はペイント(いわゆる日本語のマニュキュアですね)と誤解している人が多いので、必ず説明しなくてはいけないとビューティーシャンの方々が話されていました。
マニュキュアとは基本的に、甘皮の手入れ、マッサージ、パックです。ですから、男性のためのマニュキュアも有るわけです。もちろん、ペイントはしませんが。(笑)
アートは片手に1本まで。すべての指にアートを施すのは、パーティーを除き下品であるとされています。最近日本ではジェルが支流だそうですね。ジェルなら1か月はもちますし、お料理をしても大丈夫ですから、人気があるのは納得です。
ただし、英国では一流のサロンではジェルは扱いません。毎週1回サロンで手のお手入れをして、ペイントをしてもらうことがよしとされるからです。
欧米では一流企業でも女性重役や社長が多いのですが、ある有名企業の女性社長(年齢30歳、なんと年収は30億円)のオフィスにお電話をしたときに、秘書の方が、「今彼女は手のお手入れをしにサロンにいっているわ。2時間後に戻ります」と応対してくれました。
日本ではとても考えられないことですが、この国ではその女性がゆとりをもった生活をしていることの証拠なのです。仕事だけではなく、家族との時間やパーティーなどおもてなしの時間をたくさんとれることが一流であるわけです。
その夜、その女性社長とお食事を一緒にしましたが、まさに『光るような美しい手』に真赤なマニュキュアをしていました。もちろんアートはなし。ペデュキュアには左右1本ずつアートが入っていました。
ブランド物にあふれ、一見金銭的・物質的には本当に豊かな生活をしている日本。
これからは主婦も1週間に1回は手のお手入れにいくなど、たまには家事をしなくてもよいわといった、精神的に豊かな生活も取り入れられていくといいですね。
そしてペギー先生のように70歳になってもきれいな手をもった、美しい女性になりたいものです。