マイケルジャクソンさん

6月26日になったばかりの真夜中12時すぎ、そろそろベットに行こうかと思っていたところ、それまで見ていたテレビ番組が突然BBCニュース番組に切り替わりました(BBCは英国における日本のNHKのような局)。

あまりに普通ではないことだったので、私たちが思ったのは「王室の方に何かあったのでは?」ということでした。

内容は歌手のマイケルジャクソンさんが亡くなったということでした。もちろん大スターでもあり、まだ亡くなるには若すぎるということもありましたが、この報道の仕方は、まさに「異例」でした。

朝はテレビもラジオもマイケルジャクソンのことばかり。人々の会話もすべて彼のことです。

硬いことで知られるタイムスという新聞も表紙一面はマイケルジャクソンが亡くなったという記事が掲載されており、あのタイムスの表紙一面記事がマイケルジャクソンということで、このこと自体がニュースになっていました。

マイケルジャクソンは、音楽やダンスの才能だけではなく、それと同時に黒人としてはじめて、白人、黒人、子供、大人も聞いて楽しむことができる音楽を世におくりだしたことで評価を受けています。

報道されていた彼の功績は:

ファースト ブラックマン イン MTVジェネレーション
マスター オブ ムーブメント
ミュージックレガシー

などなど書ききれないほどです。

ニュースレポーターの中には、半泣き状態で報道している方もいて、改めてどれだけ彼が英国でも影響を与えていたかがわかります。

英国は、もともとモータウン(Motown)という黒人音楽をはじめに受け入れた国です。音楽にあまり興味のない方もきっとモータウンの曲は、ダイアナ・ロス、スティービーワンダーをはじめ、どこかで聞いたことがあるはずです。

モータウンミュージックは、アメリカに住んでいた黒人達が作り始めたのですが、当初アメリカでは全く受け入れられず、彼らは英国に渡ってきて、いわゆる「地方めぐり」をしていました。

昔から貴族文化のひとつの特徴として、パトロンとして新しいものを発見し、広めていくことが大好きなイギリス人はすぐにこの音楽にとびつき、まず英国で大ヒット、その後逆にアメリカに帰っていったのです。

マイケルジャクソンも、ジャクソンファイヴとして、このモータウン初期の代表シンガーです。

だからこそ、最近の度重なる刑事訴訟などでいわゆるボロボロになっていた彼に復帰コンサートをするように働きかけたのが英国人でした。

来月にはロンドンを中心に50箇所でコンサートをすることになっていて、チケットも50箇所すべて1日で売り切れ、皆、彼が来ることを心待ちにしていた矢先だったのです。

驚いたことにチケット販売当時、「50歳の彼が50箇所すべてのコンサートをできるなんて考えていない。

でも彼にこれだけの人間がサポートしていると教えることが大事なんだ」という発言も多く報道されていました。

この、たび重なる刑事訴訟が彼に与えたストレスはもちろんはかり知れません。

彼の顧問弁護士は、「これらのマイケルジャクソンに対する訴訟・告訴すべてうそであることをきちんと証明した。それなのに民衆の多くは彼に有罪判決をくだしてしまった。」と話しています。

このような、彼の才能とは全く関係ないことで活動できなくなってしまった彼に、英国は名誉を復活させる機会を与えてあげたかった、そう話した英国人女性レポーターの涙ぐんだ目がたくさんのイギリス人の気持ちをあらわしているかのようでした。

数か月前、偶然、ボディーガードを連れたマイケルジャクソンさんのお姉さまとアイルランドでご一緒したことがあります。

ダブリンのあるホテルからテーブルコーディネートの仕事を依頼されたためのアイルランド訪問でしたが、ロンドン ヒースロー空港のラウンジ、飛行機、ホテル、夜のレストランまで偶然彼女と一緒だったので、自然にお話がはずみました。(運よくストーカーとは思われなかったようです。)

そのときに彼女は、お金のために人はこんなうそをつけるものなのかとショックを受けたと、度重なる
マイケルジャクソンさんに対する訴訟のことを話しています。

アメリカだけでなく、イギリスにも有名人やお金持ちを相手に、訴訟をでっちあげ、お金をとるということを仕事にしている人間がいます。

これは現代病と呼ばれています。マイケルジャクソンさんのケースのように、たとえそれがうそで無実が証明されても、一般大衆ははじめの報道を信じてしうまうことが多いため、何もしていないのにはじめからお金を支払ってしまう有名人もいるようです。

特に男性有名人を相手に脅迫するおそろしい女性のことをKISS & TELL というのですが、これはまた別の機会をみつけて書きますね。

マイケルジャクソンさんの妹さんが言った言葉、We will never be the same (このひどい訴訟事件があった後の自分たちは決して以前の自分たちにはもどれない、)たぶん一生わすれないと思います。

これだけの偉大な功績がありながら、最後は幸せとはいえない状況でなくなってしまったマイケルジャクソンさん。

それでも、多くの子供たちがムーンウォークやスリラーのダンスのマネをし、ロンドンのマダムタッソー館には、マイケルジャクソンの人形をみるための大行列ができ、リバプールストリートでは動けないほどのたくさんの人が集まり、彼の歌を大合唱しました。

彼の功績はこうして世代や国、人種を超えて引き継がれていくのでしょう。

多くの英国人は、彼に関するスキャンダル報道とは関係なく、純粋に彼の才能を評価し、惜しんでいます。

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